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秋田県央板@秋田ring
下【秋田】心霊スポット
563: 1/19 2:56
数年前本荘沖で漁の最中パンパンに膨らんで大の字になり浮かぶ水死体を遠目に見つけた。
そういう場合海保に連絡して漁船は漁止めて無償でお手伝い、ってのが不文律なんで俺らは水死体が目視できる距離を保ち見失わないように海保の到着を待った。
以前東日本大震災の閲覧規制された水死体画像を見てた俺は、針を刺せば爆発してしまいそうなほどパンパンに膨らんだ仏さんに哀れみを向けながらタバコを吸っていると遠くから海保の船が。
親方が無線で方角と発見に至る詳しい状況を説明、海保は仏さんの回収に向かった。
しかしおかしい。今目の前で回収に対応しているのは海難事故に慣れた海保のはず。
だが素人目に見ても明らかに回収に手間取っている、というよりは回収の意図が全く感じられない。
親方も向こうの動きに違和感を感じたようで、「ありゃただの水死体じゃねな。面倒に巻きこまいだがもな。」と明らかに顔が曇った。
…脱北者!
親方の言葉で頭を過ったのはこれだった。確かに脱北者だったら相当面倒な事になる。当然周辺海域の調査のために漁にも何らかの影響が出るのは誰の目にも明らかだ。
と、気まずい沈黙の流れる船内の雰囲気を知ってか知らずか、海保に動きが。
…!?
遠目からも確実にわかる。水死体を回収していない。間違いなく水死体は未だ波間にゆらゆらと一定のズムを刻みながら漂ったままだ。
だが海保の船はゆっくりと踵を返しこちらに向かってくる。そして先輩が一言。
「…あれ、本当に海保なんだが?」
まさかこの人はあれは海保などではなく北の工作船だとでも言う気なのか。状況が飲み込めず、まるでメトロノームを凝視してしまうかのようなあの感覚で目の前の寄せては返すを繰り返す波をただ呆然と見つめ続けていた俺を正気に戻したのは、船にエンジンが掛かる音だった。
親方も何か不審に感じるものがあったらしく、いつでも船を出せるように身構えているようだった。
だが俺たちの警戒心をよそに向こうの船は、悠然と、だが只成らぬ威圧感と共にこちらの船に横付けしてきた。
両者にそれなりに距離があるとはいえ、向こうの速度や旋回性能を考えればこの距離はあって無いようなもの。俺たちの緊張は際に達していた。
そして次の瞬間、ガガッ!っと外部スピーカーがオンになる。
ハングル?片言の日本語?予想の候補は少なかった。たが聞こえてきたのは
ははははははははははっ!
笑い声。
なんだ?何が起こってんだ?まだ響く。全く状況が理解できない。
だが次の一言で全てを理解した。
「いやー、申し訳ね、あれ、水死体でねくて、ダッチワイフだすわー(笑)まず水死体でねし回収お願いでぎるすか?」
なん……だと!?
そう、俺たちはダッチワイフを水死体と勘違いしていた。意図的になのかどうなのか空気がパンパンに詰まったそれを、俺たちは水死体と思い込んでしまっていたのだ。
押し寄せる安堵と爆笑。親方曰く、この歳なって涙流すまで笑ったのは久々との事。その後ゴミを回収、港に戻った。
ほんと海保には申し訳なかったわ(笑)
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